小坂うに店

Column
小坂雲丹店喫茶室だより
1986(昭和61)年、小坂うに店は、
八幡半島の馬ノ瀬に加工場を併設した
販売所を作りました。
観光バス旅行が主流だったかつてに比べると、
店を訪れるお客様はめっきり減りましたが、
壱岐島ならでのゆるやかな空気は、今なお健在です。
いつか皆様とお会いできたらという願いを込めて、
徒然なるままにお届けします。
2023.11.14

コーヒーマメウニ?

秋を飛び越えて、すっかり冬になりましたね。我が家は1970年生まれの平屋ですので、通気性抜群。スースースースー新鮮な空気が送り込まれ、猫も人間もうかうかしていられないのであります。朝6時前に起きると、まず猫5匹のごはんを準備します。カリカリに体にいいサプリ粉、茹でたささみ、カツオ節をふりかけ、大好物のちゅーるを添えたらできあがり。みんなが元気一杯食べているのをみると、ほっとします。さてと、お次は人間です。朝はネルドリップ珈琲から始まります。20グラムの豆を挽いて、マグカップ一杯分だから150ccくらいでしょうか。いつも適当です。でも珈琲を持って仕事机につくと、さあ今日も頑張ろうかという気になるから不思議です。

さて、ある時『ウニハンドブック』(文一総合出版)をめくっていましたら「コーヒーマメウニ」なるうにを発見。不正形類 カシパン目・マメウニ科のこちらは2019年に発見された新種だそう。インド・西太平洋海域や相模湾以南に生息しているとのことで、いつか実物を見てみたいものです。ある珈琲屋の店主が、漆黒に色づいた珈琲豆をしげしげと眺め「紫色にみえるね」と嬉しそうに呟いたことがあります。当時はそんなふうに思えなかったのですが、うにの棘の深い紫色は艶めく深煎り珈琲豆の色に見えなくもない・・・。視覚、聴覚、嗅覚などの五感で判断する世界は、時と場合、出会いや人生経験によって、この先いかようにも変化するのでしょう。同じ、はない。いつの瞬間も常に真新しいのです。

                                       文責:小坂章子

2023.11.02

やはたの海女さん

初めまして、2代目の眞&恵子の長女の小坂章子と申します。フリーのライターとして福岡を拠点に取材・執筆活動をしています。主なフィールドは喫茶店や珈琲、手仕事によるものづくり。自然から得た材料で何かを作る仕事、市井の人々の普通の暮らしに何より興味があります。

故郷の海女さんの仕事もその一つ。2010年には雑誌『手の間vol.8』にて、「農と食を巡るお話 −やはたの海女さん– 海と、祈りと、共に生きる。やはたの海女さんの仕事と生活。」というページを作りました。岩場から手探りで雲丹を捕る「陸磯」と、水深の深い船から潜る「船磯」の取材を通して、心に残った海女さんの素敵な言葉たちをご紹介しますね。

「体ひとつで潜ることについては職業と思うとるけん、辛いとも何とも思わん。あたしは、まーだ泳ぎたい」
「同窓会の時、旅から帰ってきた人はきれいな格好しとるけど、自分は肌も真っ黒でお洒落もせんで普段着たい。若い頃は、なんで海女を習ったとやろうかと後悔もしたばってん、今は海女の仕事ば誇りに思う。自信を持って話せるよ」
「みんなと一緒に昼ご飯を食べるとは楽しいね。桶の中身は、何もなかっても」