小坂うに店

雲丹
小坂うに店のこと

雲丹を生業に、半世紀
今、私たちにできること
創業は、1960(昭和35)年。
大正生まれの祖父母が、
来島した山口県豊浦郡豊浦町(現・下関市豊浦町)の職人から
雲丹のアルコール漬け加工と瓶詰め技術を学び、
家内工業として取り組み始めたのがルーツです。

その後、島の人々に技術を伝え、
最盛期は約20ものうに屋が点在。
壱岐ウニ加工事業協同組合を結成し、
切磋琢磨してきました。

けれど近年の温暖化により、
海の生態系は様変わりし、漁獲高は激減。
島内のうに屋も次々と姿を消し、
令和5年、組合も解散となりました。

天然雲丹の行く末が危惧されますが、
私たちにできることは、まだあるはずです。
壱岐島の自然と人間の叡智によって育まれた
磯の宝を、次世代へ繋いでいくために。
私たちは、一日でも長くうに屋を続けていきます。
小坂うに店のこと
about 1
「うにの島」と呼ばれた
玄海灘の夢の浮島
碧く澄んだ玄界灘の夢の浮島、長崎県壱岐島は、
古より日本屈指の「うにの島」と呼ばれています。
島の東部に伸びる八幡半島では、
雲丹漁の解禁を迎える毎年5月1日から約1カ月、
海女や海士の奮闘が続きます。
天候や潮目、風向き、月の満ち欠けなどによって
その日の漁場を決めたら、
「今日も無事に働かせてください」と
神様に手を合わせ、大海原へ飛び込みます。

私たちにとって海女や海士は、
命綱ともいうべき大切な存在です。
小坂うに店では、
そんな彼らの営みと島の自然に敬意を表した、
捕れたて雲丹の商品を届けてまいります。
about 2
海の希少な
資源を守りつつ
生活の糧を得る、
八幡の海女さん
小坂うに店から、車で3分。
浜本海岸という漁場にずらりと並ぶ
海女さんのクルマが、磯解禁の合図です。
磯の口開けは、旧暦の3月3日の節句磯。
今季はどうだろうと、海女さんも私たちもソワソワ。

いよいよ解禁日の5月1日を迎えると、
浅瀬に見え隠れするカラフルなレオタードに心躍ります。
時折、風にのって聞こえてくる「ピューイッ」という
磯笛は、平安時代から伝わる海女独特の呼吸法。
人間にそなわった野生にハッとさせられる瞬間です。

八幡半島の海女さんは乱獲防止のため、
ウェットスーツを着用せずにレオタードや
セーターなどを着用するのが習わしです。
海から上がるたびに焚き火を囲み、
弁当を手に他愛もないお喋りに興じる彼らは、
とてつもない生命力にあふれています。
about 3
浜から戻ったら息つく暇もなく、殻割りに取り掛かります。
うにかきと呼ばれる専用のアルミスプーンを手に、
雲丹の棘をグッと掴む海女さんの指先は、
きれいな赤紫に染まっていきます。
しゅるりしゅるり、しゅるりしゅるり。
殻にうにかきを差し入れて身だけをすばやく集める
仕事ぶりは、年季のなせる技。
この状態の雲丹を「かき落とし」といい、
熟練の海女さんの場合、殻や内臓などの
不純物が少なく、色みがきれいなのも特徴です。
解禁直後の5月初旬の雲丹は産卵前につき、
色も美しく、身がふっくらとして甘さもピカ一ですが、
下旬にかかると身が溶けて流れ始めるので、
初旬にどれだけ捕れるかが勝負です。

とはいえ、人間も自然の一部。
粘り強く、柔軟に自然と対峙していくほかはありません。
だからこそ首から下げたお守りをギュッと握り、
祈りを捧げる海女さんに尊いものを感じるのです。
母の手は、
雲丹の匂いがした
限られた資源と
向き合う日々
幼い頃、母親の手は、いつも雲丹の匂いがしていました。
大人になるまで、あの独特の甘い香りが
苦手だったことを思い出します。

ようやく雲丹の美味しさがわかるようになった今、
地球温暖化によって海の生態系が激変。
高級珍味・雲丹の希少性も増す一方です。
ムラサキウニは、海女さんや漁場によって
サイズや色合い、身の流れ具合など
日々刻々と変化していきます。

仕入れた雲丹の特性を見極め、
納得のいく商品に仕上げるのが、うに屋の仕事。
限られた資源を最大限に生かす
加工方法を研究してきました。

ひとすくいの雲丹を通して、
壱岐島の自然や風土、
海女の仕事に想いを馳せていただけたら。
毎年心待ちにしてくださる皆様の「美味しい」を励みに、
丹精込めた商品をお届けしてまいります。

加工の流れ

素材
縄文時代の貝塚から殻が発見されるなど、
古来より食されていた雲丹。球体の殻に棘を生やした棘皮動物の一種です。
食用とされる山吹色の部分は、生殖巣(雌は卵巣、雄は精巣)で、
一個の雲丹から採れるのは、ほんのわずか。
身崩れしやすくて足がはやいため、加工には素材を見極める経験値が必要です。
採取
大潮は朝10時半頃から、小潮の際は朝7時から海へ。
海女さんは、うにかぎを手に素潜りで雲丹を狙います。
沖に船を出して潜る「船磯」と、
岩場の浅瀬から潜る「陸磯」のスタイルに分かれます。
殻割り、身を出す
磯桶に集めた雲丹の殻を2等分に割り、
うにかきと呼ばれる専用のアルミスプーンで身をかき出します。
この「かき落とし」の状態にするまでが海女さんの仕事です。
塩洗い
海女さんが持ち込んだ雲丹を八幡半島で汲んできた殺菌海水にさらし、
目の細かい竹笊と竹箸で、消化管や糞、殻などの異物を
迅速かつ丹念に除去していきます。根気のいる工程ですが、
おなじみの海女さんとのお喋りに元気をいただくひとときでもあります。
塩漬け、水切り
粒度の小さい溶けやすい塩を長年の経験による塩梅でふりかけ、
浸透圧に作用によって雲丹の余分な水分を抜いていきます。
雲丹本来の旨味を凝縮するための塩加減を模索し続けて、半世紀。
小坂のうにの味を決める大切なプロセスです。
調味
その日仕入れた雲丹の状態に合わせて調味します。
磯の風味を生かしつつ、旨味を凝縮させた味わいは、
濃厚で深い余韻をもたらします。
瓶詰め、冷凍
アルコール添加しない「一汐生うに」と「うにめしの素」は、
その日のうちに詰めて、急速冷凍まで行い、一年分の出荷に備えます。
5月〜6月頭の漁期は、常に待ったなし。
雲丹の洗い場と加工場をダッシュで行き来しています。